造影剤の使用指針
一部の症例のMRI検査、CT検査における造影剤の使用が診断能の向上に資することは明らかで、AIC八重洲クリニックにおいても平日は20件程度の造影検査が施行されております。
現在利用できる経静脈性ヨード造影剤、ガドリニウム造影剤は安全性の高い薬剤ではありますが、一定の頻度で副作用が生じることが知られています。大部分の副作用は軽微で短時間に回復しますが、アナフィラキシーショックや造影剤腎症、腎性全身性硬化症といった生命予後に直結する重篤な副作用が発生しうることも事実です。
当クリニックでは被験者の安全が第1と考え「造影剤使用指針」を作成し実施することとなりました。
なお造影検査の実施に関し、当院常勤放射線科医の判断により、ご依頼された内容を変更する場合もございますので、ご了解のほど何卒よろしくお願い申し上げます。この場合はその事情につき読影報告書に記載いたしますのでご参照いただければ幸いです。
日本医学放射線学会(JCR2002)、アメリカ放射線学会(ACR2008,ver6)、ヨーロッパ泌尿器放射線学会(EURS2012,ver8)のガイドラインを参照し作成しました。
造影剤の副作用歴
禁忌:前回副作用の程度を問わず禁忌です。
造影検査が必要な場合はCT→MRIあるいはMRI→CTに変更を考慮(ただし造影剤副作用の既往はそれだけですべての薬剤に対する潜在的過敏性があると考えられるので厳重な注意を要します)。
気管支喘息
原則禁忌
成人発症の喘息は基本的に造影いたしません。
(ただし小児期に喘息が治癒した成人は造影可能です。)
咳喘息について
必要な検査に絞り、「咳喘息と診断されている方で、喘鳴」「呼吸困難」など発作の既往がなく(問診で気管支喘息ではないと推定され)、本人が造影検査を希望していること場合、リスクが少し高い可能性があること、副作用があり治療が必要であればすぐに対応することを説明し、造影検査を行う。
腎機能低下
- eGFRが指標となる:CT,MRIとも30未満は禁忌
- CTは造影剤腎症、MRIは腎性全身性硬化症が問題となります。
- CT:糖尿病や腎炎などの基礎疾患とその程度を考慮しなければなりませんが、基本的な情報が不十分であることが多いのでeGFRが45-30ではヨード造影剤を適宜減量(可能であれば造影剤使用中止)、30未満はヨード造影剤は使用しないこととします。
- MRI:eGFR 60~30ではGd製剤はマクロ環構造の造影剤(当院ではマグネスコープ)を使用、30未満はGd製剤は使用しません。
- 3~6ヶ月以内の腎機能検査(血性クレアチニン)をお願いいたします。
透析中
- 腎性全身性線維症の可能性があるのでGd製剤は禁忌
- CTはOK
- 造影検査が必要な場合はヨード造影剤(CT)を使用すること(透析しているのでOK)。
- 乳腺MRIなどのGd製剤必須でありながらCTで代用できない場合には充分な説明と
理解のうえでマクロ環構造の造影剤を使用も考慮する。
ヨード造影剤を使用した場合の血液透析をいつするか
透析スケジュールと造影剤投与を合わせる必要はない
- 水分の過剰補給はしないよう注意
妊婦されている方
基本的に使用不可
- どうしても使用しなければならない場合には適宜対応
- MRIはマクロ環構造の造影剤を使用することも考慮する
- ヨード造影剤使用後、生後1週間以内に甲状腺機能をチェックが必要
授乳期
基本的に制限なし
- MRI:Gd製剤は制限なし
- ACRのガイドラインではヨード造影剤は母親が不安があれば24時間授乳中断
現在まで母乳を介した乳児の副作用が報告されていないこと、母乳から移行する造影剤量は乳児自身の検査で使用する量の1%以下であることを説明し納得いただければ授乳を中断しない。
ビグアナイド系糖尿病薬
腎機能に問題がなければ(eGFR60以上)内服OK
eGFR60未満では検査前後48時間の内服中止、検査後の腎機能チェックを行う(検査前中止していなかった場合は検査後のみ内服中止)
- 腎機能低下を有する糖尿病患者にヨード造影剤を使用するとまれに乳酸アシドーシスを生じうる(予後不良で最近も死亡例の報告あり)
- 高度な腎機能低下は元々ビグアナイド系糖尿病薬は禁忌なので服用していないはず。
- eGFR60未満では検査前後48時間の内服中止、検査後の腎機能チェックを行うことが原則(検査前中止していなかった場合は検査後のみ内服中止のみとする)
褐色細胞腫の疑い
「造影CTは不可」「単純MRIに変更」
- ヨード造影剤の急速静注が契機となりクリーゼを発症した症例報告がある
- 内分泌学的検査で褐色細胞腫が強く疑われている場合の第1選択はMRIとし、MRIが施行困難な場合は単純CTを行う