主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶

主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 とは

  1. 膵管は、膵臓(すい臓)を通る膵液の通る管(くだ)です。以下のようなメカニズムで膵管拡張が生じます。

      腫瘍や慢性膵炎による場合

    1. 腫瘍(以下に記載するIPMNを除きます)が膵管に生じたり慢性膵炎になると、膵管が狭窄して流れが悪くなったり、膵管の流れが途絶してしまい、膵管が流れ無くなったりします。
      膵管は上流から膵液が流れてきますので、流れが悪くなったり流れが途絶えた上流では産生される膵液がどんどん溜まっていき、膵管が膨らみ、拡張します。
    2. 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の場合

    3. 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)が膵管に出来、どろどろの粘液が膵管内に生じると、膵管の流れが悪くなります。産生される膵液はスムースに通過できずに滞留し、膵管が拡張します。
      1. [膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)のタイプ別分類]
        1. IPMNは膵管のどこに出来るかで以下の分類に分かれます。
          主膵管型IPMN…主膵管にIPMNが発生するもの
        2. 主膵管が拡張している場合を言います。IPMN自体のがん化リスクに加え、膵液が通る主膵管の交通が遮断されてしまうことで、がん化するリスクが加わる為、分枝膵管型に比べ、がん化のリスクは高いと考えられています。 主膵管径が10mmを超える拡張の場合には、がん化の有無に係わらず、外科手術が勧められている病院が多く存在します。
        3. 分枝膵管型IPMN…分枝膵管にIPMNが発生するもの
        4. 分枝型IPMNとは主膵管と交通する分枝にIPMNが出来ているもので、分枝膵管が拡張している場合を言います。
        5. 混合型IPMN…主膵管と分枝膵管の両方にIPMNが発生するもの
        6. 分枝型IPMNと主膵管型IPMN両方に存在するIPMNです。
        7. IPMN
        8. IPMN
      2. [膵管拡張の診断~経過観察までの手順について]
        1. 主膵管拡張の場合
        2. 最初に主膵管の流れを悪くしている原因が膵臓がんではないかという視点で検査画像を確認する必要があります。
            確認する画像
          1. MRI単純検査の場合…DWI(拡散強調像)他
            MRI、CT造影検査の場合…遅延濃染画像
          2. 膵臓がんの危険度が高い主膵管拡張
          3. 狭窄している上流部が拡張している場合
            拡張している主膵管の周囲に嚢胞(IPMNを含みます)が存在する場合
            主膵管拡張して径が5㎜以上になっている場合
        3. 分枝膵管拡張の場合
        4. 分枝膵管の拡張も検査時に腫瘍が原因ではないか?と確認をする点、当初は6か月程度の短期間で経過観察をする点については主膵管拡張の場合と同じですが、EUS等の追加検査を最初に行う割合は主膵管拡張と比べれば低いです。
          経過観察を行った際に膵臓がんではないことが明らかになった場合には分枝型IPMNと診断を行い継続的な経過観察を行います。
        5. (注意)
          1. MRI-MRCP(膵管特殊撮影)、3テスラMRIの導入により診断精度が上がっていますが、膵管の描出精度は100%には達しません。その為当院では危険度が高い主膵管拡張であると判断される場合には、以下の検査を行います。
            造影CT検査
          1. 八重洲160列高精細CT、つくば320列CT検査を行い、膵管の正確な描出を行うと共に膵臓がんの有無の診断を行ないます。
          2. EUS(超音波内視鏡)検査
          3. 当院の膵臓外来に先生を出していただいている12病院(10大学病院、2総合病院)へEUS検査(超音波内視鏡検査)を依頼し、膵臓がんの有無の診断を行います。
          1. また、膵臓がんの危険度が高い場合において、一連の検査で膵臓がんが判明しない場合には、6か月程度の短期間で再度検査を行います。
        6. 出典
          1. 分枝型IPMNの診療アルゴリズム2017
          1. 分枝膵管型IPMNを経過観察する場合の留意点
          2. IPMNが癌化する危険度が高いものは主膵管型IPMNと同様、サイズが大きいもの、IPMNの大きさが経過観察時に変化しているものですが、これら以外(小さいもの、一定期間のサイズ変化が無いもの)の場合でも安心というわけではありません。
            IPMN周囲の癌化、IPMNサイズの突然の動きに対して注視していく必要があります。
          3. 出典
            1. 安川覚、柳沢昭夫:膵管がんの病理学的発育進展仮定、膵臓30:418-418、2015
                Stage0の膵臓がん 辺縁型57.1%(4/7例)、主膵管型42.9%(3/7例)
                2㎝以下の小膵癌  辺縁型80.0%(16/20例)、主膵管型20.0%(4/20例)
                うち主膵管への浸潤 辺縁型87.5%(14/16例)、主膵管型100.0%(4/4例)
              上記の事例では、主膵管に生じていない膵臓がんも主膵管に向かって浸潤していくことが示されています。結果、多くの膵臓がん事例で主膵管の拡張が生じます。
              一方、主膵管には絡まない場所(辺縁型)に生じる膵臓がんもかなりの割合に上ることも示されています。
      3. [膵管拡張の経過観察期間の考え方]
      4. 膵管拡張は膵嚢胞(IPMNを含む)や膵萎縮などと共に膵臓がん(すい臓がん)の遺伝子変異が既に生じていることを予期する画像所見です。これらの画像所見は膵臓がん(すい臓がん)の出現が近づくと悪化することがわかっている為、所見の悪化を確認した場合には、経過観察期間を短く(6か月以内)設定することで膵臓がん(すい臓がん)を早期発見できる可能性が高まります。
        その他の経過観察期間ですが、以下のように考えています。
          画像所見を発見した当初:動きの可能性がある場合には6か月
          その他:12か月おきを基準(場合によってはそれより長期)

主膵管及び分枝膵管拡張、狭窄、途絶以外の画像所見が確認された事例

  1. 膵管拡張が発見される所見では、膵嚢胞(IPMNを含む)、膵萎縮、膵石灰化など、その他の画像所見も確認されます。
    これらは、膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見であり、これらの所見は膵臓がん(すい臓がん)の発症が近づくと数が増えたり、悪化することがわかっていますが、その悪化は以下のような種類に分けられます。
      [画像所見の悪化のパターン]
        単独所見が経過観察で悪化
        複数の所見が経過観察で悪化
        所見の確認される数が経過観察で増加していくことによる悪化
    1. 1つ1つは著しい悪化を示さないのに複数の所見が隣接しているようなケースでの早期の膵臓がん(すい臓がん)を経験しています。このようなケースでは、膵嚢胞(IPMNを含む)と膵管拡張だけを経過観察の対象としていると見逃す可能性が高いので注意が必要です。
    2. 下記は、膵管拡張と同時に他の膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見が発見された事例です。

    実際の膵臓がん(すい臓がん)の早期発見事例

    1. 膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶、膵臓がん(すい臓がん)早期発見の事例です。
        • 事例
          18
          膵臓がんステージ
          ステージ0
        • 検査機器MRCP
          造影
          危険因子
          飲酒
          肥満
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          17
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器MRI 上腹部
          造影
          危険因子
          飲酒
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          16
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器MRI MRCP
          造影
          危険因子
          喫煙
          肥満
          慢性膵炎
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          15
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器CT 上腹部
          造影
          危険因子
          喫煙
          肥満
          慢性膵炎
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          14
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器MRI
          造影
          危険因子
          飲酒
          肥満
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          13
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器US
          造影
          危険因子
          飲酒
          肥満
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          12
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器MRI
          造影
          危険因子
          飲酒
          喫煙
          慢性膵炎
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          10
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器CT
          造影
          危険因子
          慢性膵炎
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          9
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器MRI
          造影
          危険因子
          慢性膵炎
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          8
          膵臓がんステージ
          ステージ0
        • 検査機器MRI
          造影
          危険因子
          喫煙
          肥満
          慢性膵炎
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          7
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器CT
          造影
          危険因子
          飲酒
          喫煙
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          5
          膵臓がんステージ
          ステージ0
        • 検査機器CT
          造影
          危険因子
          肥満
          慢性膵炎
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          4
          膵臓がんステージ
          ステージ0
        • 検査機器CT
          造影
          危険因子
          飲酒
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          3
          膵臓がんステージ
          ステージ0
        • 検査機器MRI
          造影
          危険因子
          肥満
          慢性膵炎
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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        • 事例
          2
          膵臓がんステージ
          ステージ0
        • 検査機器CT
          造影
          危険因子
          飲酒
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
          詳しく見る↗
        • 事例
          1
          膵臓がんステージ
          ステージ1
        • 検査機器CT
          造影
          危険因子
          糖尿病
          飲酒
          喫煙
          加齢

          膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見
          膵嚢胞(IPMNを含む) 主膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶 膵の限局的萎縮、くびれ 膵石灰化(慢性膵炎・膵石)
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  1. その他の膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見

膵臓がん(すい臓がん)の症状に戻る

当院の診断体制をご紹介します
  • 経過観察で悪化しているか診断
    「MRI/CT等の画像検査で膵臓がんに向かう途上で確認されることの多い画像所見」があります。 当該所見は膵臓がんの発症が近づくと悪化することがわかっていますので、経過観察時に行った検査画像を元にその差を診断することが非常に重要です。
  • スコアリングシート
    診断プロセスは画像診断報告書に記載されており、過去の診断書と見比べることで当該画像所見の推移がわかりますが、これをよりわかりやすくするため、膵臓スコアリングシートを作成しています。 膵臓がんを早期発見するための取組み
  • 全12病院の医師が診察
    当院膵臓外来は以下の病院(全12病院)から消化器内科、消化器外科のうち膵臓疾患に携わる医師、放射線科医を招いて開設しています。 1公益財団法人がん研究会 有明病院 2筑波大学附属病院 3東京女子医科大学病院 4東京大学医学部附属病院 5東邦大学医療センター大橋病院 6順天堂大学医学部附属順天堂医院 7聖路加国際病院 8慶應義塾大学病院 9東京医科大学病院 10東京医科大学病院 11帝京大学医学部附属病院 12東京慈恵会医科大学附属病
  1. 膵臓がん-症状と早期発見- >
  2. 膵臓がん(すい臓がん)の症状 >
  3. 膵管及び分枝膵管の拡張、狭窄、途絶
当サイト監修
Seishi Sawano, MD, PhD
澤野 誠志 放射線診断専門医
AIC八重洲クリニック 理事長 院長 / 
AIC画像検査センター 理事長
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膵臓がんを早期発見するための取組み
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