Check1: 家族に膵臓がん等になった人が居る。膵臓がん等の家族歴のある方
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がんは遺伝子変異(遺伝子の異常)で引き起こされます。家族は遺伝子を共有しているばかりか、生活習慣に共通性が見られることが多いことから、家族が膵臓がん(すいぞうがん)等になった人=膵臓がん(すい臓がん)等の家族歴のある方は、膵臓がん(すい臓がん)を発症する危険性がほかの人より高いので注意が必要です。
- 目次
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1.がんが遺伝する仕組み
2.膵臓がん(すい臓がん)の罹患リスクが高まる家族歴について
3.加齢、環境要因(生活習慣、環境等)について
がんが遺伝する仕組み
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がんの発症原因
- 人類の遺伝子は約2万種類、父親から1つ、母親から1つ、受け継がれた2つがセットで1つの遺伝子を構成します。この2つセットの遺伝子の2つ共が異常(変異)となった場合に「がん」化に向けての変化が始まると考えられています。
遺伝子異常(変異)の原因は①加齢、②環境要因(生活習慣、環境等)、③遺伝的要因です。

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「遺伝的要因」とは
- 父親または母親の先天的に異常がある遺伝子を引き継いだ場合を意味します。セットで構成される遺伝子の1つが生まれながらに異常ですので、もう1つの遺伝子に①加齢、②環境要因(生活習慣、環境等)による遺伝子変異が生じるとがん化に向けての変化が始まると考えられています。
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親が「がん」の場合に子供は「がん」になるか?
- 親のがんが①加齢、②環境要因(生活習慣、環境等)等の後天的な要因による場合と③遺伝的要因による場合とによって注意度が少し異なります。
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親の「がん」が後天的な要因による場合
- 親が「がん」の場合でもがんの要因が①加齢 ②環境要因(生活習慣、環境等)の場合は、親にも先天的な遺伝子異常は存在しませんので、子供に遺伝子異常は引き継がれません。ただし②環境要因(生活習慣、環境等)は親子で同じである可能性も高く、注意が必要です。
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環境要因(生活習慣、環境等)が同じとは例えば以下のような場合です。
親が喫煙している→子供も喫煙者になる。
親がアルコールを多飲する→子供もアルコールを多飲する。
親の食事量が多い、間食が多い→子供の食事量が多い、間食が多い。
親の「がん」が先天的な遺伝子異常に基づくものであった場合
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親が先天的遺伝子異常を持っていた場合にその遺伝子異常が受け継がれる確率は1/2(50%)です。遺伝子は父親のものと母親のものを1つずつ受け継ぐため、仮に父親に遺伝子異常があった場合でも、当該遺伝子を母親から引き継げば遺伝子異常は引き継がれないからです。
親の先天的異常のある遺伝子を引き継いでしまった場合、もう1つの遺伝子に①加齢、②環境要因(生活習慣、環境等)による遺伝子変異が生じ、2つセットの遺伝子の両方に遺伝子異常が生じた際にがん化に向けての変化が始まると考えられています。
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親が若年発症の膵臓がんであった場合
親が若年発症の膵臓がんであった場合には、遺伝子異常が引き継がれている可能性が高いと考えられています。
膵臓がんの発症者は80代以降が約1/3、70代が約1/3、60代未満が約1/3です(がんの統計2021 公益財団法人がん研究振興財団)。70代以降の高齢の発症者が多い一方、60代未満の罹患者が約1/3存在します。この中には30代、40代での発症者も含まれます。
親が膵臓がんを比較的若い時に発症したという方は、若年段階でも注意が必要です。
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親が先天的遺伝子異常を持っていることで膵臓がんを発症する方の割合
先天的遺伝子異常がある方でも、必ず全員ががんになるわけではありません。膵臓がんの場合、約5%~10%が先天的遺伝子異常の拠るものと推計されています。

膵臓がんの罹患リスクが高まる家族歴について
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親の「がん」が先天的な遺伝子異常に基づくものであった場合には、その子供が遺伝子異常を引き継ぐ割合は50%です。
そして先天的に遺伝子異常がある場合には、がんに罹患するリスクは増大します。この事実を以下のように整理します。
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ご家族に膵臓がんの方がいる場合
- 父母、兄弟、子供に膵臓がんが発症した場合には、ご自身が膵臓がんを発病するリスクは増大します。
家族の1人が膵臓がんを発症した場合よりも、2人、3人とより多くの人数が膵臓がんを発症している場合の方が、膵臓がんを発病するリスクは増大します
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他のがん等の家族歴
- 他のがん等の家族歴が影響し、膵臓がんを発病するリスクが増大する場合もあります。
乳がん、卵巣がん、黒色腫(メラノーマ、皮膚がん)、結腸がん、膵炎等の家族性遺伝子異常がある方は膵臓がんのリスクが高いことがわかっています。
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- 関連記事はこちら
- 遺伝子と家族性膵がん (pancan.jp)
(内容)
家族が膵臓がん(すい臓がん)だった場合の膵臓がん(すい臓がん)の罹患リスク
家族の1人が膵臓がん(すい臓がん) : 自分自身が膵臓がん(すい臓がん)に罹るリスク2.3倍
家族の2人が膵臓がん(すい臓がん) : 自分自身が膵臓がん(すい臓がん)に罹るリスクは6倍
家族の3人以上が膵臓がん(すい臓がん) : 自分自身が膵臓がん(すい臓がん)に罹るリスクは32倍
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他のがん等の家族歴
- 他のがん等の家族歴が影響し、膵臓がん(すい臓がん)を初病するリスクが増大する場合も存在します。
乳がん、卵巣がん、黒色腫(メラノーマ、皮膚がん)、結腸がん、膵炎等の家族性遺伝子異常がある方は膵臓がんのリスクが高いことがわかっています。
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- 関連記事はこちら
- 遺伝子と家族性膵がん (pancan.jp)
(内容)
他のがんに罹患した家族がいる場合の膵臓がん(すい臓がん)罹患リスク
1. |
乳がん・卵巣がん
より具体的にはBRCA2(乳がん遺伝子)の遺伝
通常者の3~10倍、一生において膵臓がんにかかるリスクが5%
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2. |
メラノーマ(皮膚がん)
より具体的にはメラノーマ(皮膚がん)を多発するP16の遺伝
通常者の20~30倍、一生において膵臓がんにかかるリスクが10~16%
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3. |
膵炎
より具体的には冒された人は非常に若い年齢で膵炎を患う遺伝性膵炎(Familial Pancreatitis)の遺伝
通常者の50~80倍、一生において膵臓がん(すい臓がん)にかかるリスクが25~40%
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4. |
胃がん、小腸がん、結腸がん
より具体的には遺伝、唇・頬粘膜に黒色班、消化器官にポリープ・Hamaratomasができるポイツ・ジェガース腺腫性症候群(Peutz-Jegher's Syndrome)の遺伝
通常者の100倍、膵臓がんにかかるリスクは60歳までに36%
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- 上記に該当する方は膵臓ドック/膵臓検診の受診をお勧めします。
特に膵臓がん(すい臓がん)の発症リスクの高い方に記載されている他の項目にも該当する方は、危険度が増すので特に注意をしてください。
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また、膵臓がん(すい臓がん)は全罹患者のうち約1/3は60代までの比較的若年層であることをふまえ、飲酒・肥満・喫煙・家族歴のリスクをお持ちの方を対象とした早期発見のための臨床研究を行っております。
臨床研究にご応募いただいた方には特別価格にて膵臓ドック/膵臓検診を実施しております。
該当する方はぜひ当ドックをご利用ください。
加齢、環境要因(生活習慣、環境等)について
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膵臓がん(すい臓がん)の発症原因のうち、最も多い原因は加齢、環境要因(生活習慣、環境等)です。
以下の事項に該当する方は該当しない方に比べてリスクが高いことがわかっていますので、注意をしてください。
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